出版社/著者からの内容紹介
人気お笑いコンビ爆笑問題の初エッセイ集。子供の頃のこと、二人が出会った学生時代、最近思うこと……太田光の徒然なるままに綴られた爆笑必至の文章に、田中裕二の紙粘土が添えられてオモシロさ倍増! 松村邦洋・岡田斗司夫との対談2編収録。解説は中沢新一。
抄録(「電子書店パピレス」より)
田中
今回は、私の相棒の田中裕二が今までにした馬鹿な発言の数々を紹介したいと思う。
その1。大学に入学して一週間たったある日、新入生同士で親睦を深めようと雀荘で麻雀をしていた時の事、田中は突然そこにいた友達全員を自分の卓に呼び、こう言った。
「俺の名字は田中って言うんだけど、俺はこの田中って名字が嫌いなんだ。だからみんなも俺のこと田中って呼ばないでほしいんだ。これからは俺のことを“ウーチャカ”って呼んでくれ。これは高校の時からの俺のあだ名だ。俺の友達はみんな俺のことをこう呼ぶんだ」
その2。大学の2年のある日、私は当時、田中が好きだったアヤちゃんという同級生の女の子から相談を受けた。「実はこの前、K先輩からつき合ってほしいと言われたんだけど、その時、一瞬、頭の中にウーチャカの顔が浮かんで返事が出来なかったの……ウーチャカ、わたしの事どう思ってるのかしら……」
ずっと田中の片思いだと思っていたアヤちゃんが、実は田中にそこまで好意を寄せていたとは……きっと田中も喜ぶだろうと思い、さっそく田中にその事を伝えたのだが、田中は何にもアクションを起こさず、一カ月してアヤちゃんはその先輩と交際をはじめた。
半年後、私が何故あの時アヤちゃんとつき合わなかったのかと田中に聞くと、田中はこう言った。「俺も一瞬どうしようか迷ったんだけど、やっぱり、女の子とつき合うっていうのは、俺のキャラクターに合わないと思ってやめたんだ。だって、俺はこの学園のマスコット的な存在だろう? その俺が、ある特定の人とつき合ってしまったら、みんなが悲しむと思うんだ。やっぱり俺は、いつまでもみんなのアイドル、ウーチャカでいたいんだ」
その3。つい一週間前、私が、何故お前はいつも馬鹿な事ばかり言うんだと聞いた時──。「それは俺が馬鹿だからさ。馬鹿なのは悪い事なのか? だとしても俺が悪い訳じゃない。俺が馬鹿なのは、俺の脳のせいだ、俺のせいじゃない。悪いのは俺の脳だ、俺じゃない」
他にも色々あるのだが、書ききれない。また、書く事が無くなったら書こう。
(97・2月)
解散
爆笑問題を結成して九年。私は今まで、一度も「解散」という言葉を口にした事はないが、相棒の田中は何度もある。
彼から最初に「解散しよう」と言われたのは、コンビを組んで三カ月目だ。
当時私達は、月に一回開かれるお笑いライブの素人参加コーナーに毎月出演しながら、プロになるチャンスをうかがっていた。その頃の我々は“漫才”ではなく、“コント”をやっていた。よく漫才とコントの違いが解らない、と言う人がいるが、要するに、センターマイクの前に二人が立って、馬鹿な事を喋り合うのがいわゆる“漫才”で、それぞれが何かの役に扮して、お芝居をするのが“コント”だ。
その日のコントは、私の中でもかなりの自信作だったが、ただ一つの不安は、ネタの冒頭にある田中の長ゼリフだった。コントは漫才と違い、お芝居だから、最初の状況説明や雰囲気作りを失敗すると、最後まで客を引き込めないまま終わってしまう事になる。漫才なら、一つ失敗しても、すぐ別のネタに話題をフって雰囲気を変えればいいのだが、コントはそうはいかない。そういう意味でも田中の長ゼリフはとても重要だった。本番。田中は、案の定失敗した。緊張して舌が回らなかった上、セリフを忘れてワケの解らない事を喋り続け、全く客をつかめないまま、ネタはドッチラケで終わった。今でもネタがウケなかった後は、かなり落ち込むが、当時のソレは今と比べものにならない。何しろそこしか発表の場がないのだから、そこで失敗したら全て終わりなのだ。私はかなり厳しい事を田中に言ったと思う。すると田中は私の文句を聞き終わった後、決意したような顔でこう言った。「解った。じゃあ、来月のネタで、もしまた俺がトチったら解散する」。全く意味が解らなかった。勝手にトチって勝手に解散されちゃたまらない。とにかく私は、「それは認められない」と言った。
それから九年続けてきて、一番最近、田中が解散を口にしたのはつい一週間前だ。駅のホームで電車を待っている時、私が暇つぶしに彼にタバコの火を近づけて遊んでいたら、突然、火のついたタバコを素手でひねりつぶし、真顔で「解散だ! もう無理だ!」と叫んだ。簡単に解散を考える奴だ。
(97・8月)
著者について
爆笑問題(ばくしょうもんだい)
太田光(おおた ひかり)
1965年5月13日埼玉県生まれ。日本大学芸術学部中退。身長170cm。
田中裕二(たなか ゆうじ)
1965年1月10日東京生まれ。日本大学芸術学部中退。身長154cm。
’88年結成、現在では政治から芸能界まで様々な社会現象を斬る漫才は、若者だけでなく、幅広い年齢層に支持されている。
’93年NHK新人演芸大賞を漫才では初めて受賞し、テレビ朝日“GAHAHAキング爆笑王決定戦”でも、10週をストレートで勝ち抜き初代チャンピオンに輝いた。
漫才だけでなくコントもこなし、映画「バカヤロー4」では太田光が監督に抜擢され、また“’94ぴあプロフェッショナル大賞”では、以前太田が主演した映画で演技力が評価され、新人奨励賞を受賞した。その他小説なども手掛け、才能の多才さをみせている。まさに飛ぶ鳥を落す勢いで、今最も注目を集めているコメディアン二人組である。
I 想起……アナムネシア
夏休み
まんが1
まんが2
松田聖子記者会見
好きな景色
長嶋監督
子供人
SF短編小説
学園祭
秘密基地
SPECIAL TALK(1)太田光×田中裕二
II 形成……ビルドウンク
田中
解散
ショーパブ
ショーパブ2
コーラスライン
単独ライブのウラばなし
テレビっ子いじめっ子
受験
ダイエット
パンチ・ライン
ボツネタ
SPECIAL TALK(2)太田光×田中裕二
III 自我……コギト
髪形
怖い話
司馬遼太郎さんが亡くなって
連ドラとオウムとあの男の関係
キムタクが頂点に立つ時?
二十年
夢
夢2
今日も誰かとひとり言……
ドラマ『ピュア』を見て思うこと
中央線は自殺が多いらしい
何がおかしくて笑っているのか
胃カメラ
SPECIAL TALK(3)太田光×田中裕二
IV 狂騒……オリギア
薔薇
蟹と殺人鬼
善か悪か
藤田朋子記者会見
安楽死
パチンコ
薬害エイズ
ヘブンズ・ゲート
見ないフリ
ガラパゴスの箱船
SPECIAL TALK(4)太田光×田中裕二
特別対談 其の一 WONDER MEETING
松村邦洋×爆笑問題
特別対談 其の二 WONDER MEETING
岡田斗司夫×爆笑問題
解説 中沢新一