出版社/著者からの内容紹介
1998年ベストセラー第8位(ビジネス書部門)『人はなぜ、足を引っ張り合うのか』から4年──。対人関係の行動特性に詳しい著者が、現代の日本型成果主義に警鐘を鳴らす!
本書では、思わず「ついていきたくなる上司」の行動特性について平易に解説する。
抄録(「電子書店パピレス」より)
序章 ヒューマンリレーション・コンピテンシー
「ついていきたくなる」人間の魅力
■ビジネス・コンピテンシーに付け加えるべき「概念」
読者の方々は、私がこれから主張することに驚かれるかもしれません。
成果主義時代だからこそ、ビジネスマンに最も求められる能力は、企画力でもなければ分析力でもなく、実は「人間関係力」である、ということを私は主張したいのです。この能力を私は《ヒューマンリレーション・コンピテンシー》と名づけました。
日本的経営が崩壊し、企業は実力主義・成果主義の時代に入りました。実際、良い悪いは別にして、各企業は次々と新しい評価方式を導入しています。その人事評価方法の一つとして《ビジネス・コンピテンシー》というものがあります。「成果を上げられる人の行動特性」を徹底分析して、組織構成員の成果向上に役立てようというアメリカ生まれの考え方ですが、この考え方にシフトしすぎることはとても危険です。
なぜなら、成果主義時代の到来で、ビジネスマンの意識はどうしても、「これからは会社の業績よりも自分の成果だ、自分の結果だけ出せばいいのだ、もうこれまでのように人間関係を最優先にして仕事を進める必要はないのだ」と考えがちになるからです。
しかし、拙速で単純な成果主義の導入は、すでに多くの問題を生み出しています。とりわけ、歓迎したはずのビジネスマンたちがこんなはずではなかった、という焦燥感に駆られているのが現状です。能力評価の名の下に、若い人たちは評価を下げられ、昇進の機会を奪われ、中高年は能力のなさや成果のなさを理由にリストラの材料にされています。足の引っ張り合いが激しくなったのです。
勢いづいたビジネスマンの期待はなぜ、見事に外れたのでしょうか。それは成果主義と聞いたときの「成果」を各自が自分の都合のいいように解釈したからです。その解釈が大間違いだったのです。たとえば、その典型は、「能力」といったときに人間関係力、ここでいうヒューマンリレーション・コンピテンシーを十分に考慮に入れていないことです。
組織は人でできているのですから、企業内で生きる人間にとって最も決め手となる能力は、どんな時代になろうと人間関係力なのです。そのことは、冷静に考えればすぐにわかるはずです。それなのに業績主義導入と聞いたとき、これで会社の嫌な人間関係から解放される、そんなことを気にしないでもすむと舞い上がってしまったのです。
組織で生き抜く能力は人間関係を離れては存在しません。それどころか、能力主義になればなるほどヒューマンリレーション・コンピテンシーが問われることになるのです。
こう言うと、「人間関係のことなら俺に任せておけ、パソコンは苦手だけど人間関係なら自信がある」と言う人も少なくないと思います。確かに、終身雇用時代の日本人は人間関係を大事にするといわれてきました。会社では仕事よりも人間関係のほうが大事で、人間関係さえうまくやっていれば、会社で困った立場にならずに無事に役目を果たすことができ、昇進もスムーズだったのです。ですから、ビジネスマンは会社の人間関係に人一倍力を入れ、気を配ってきました。
他方、この複雑な人間関係の中で自分には人間関係力がないのではないかと悩んでいた人もまた少なくなかったといえます。ところが、これまでの日本企業のビジネスマンの場合、たとえ人間関係力が人よりも多少劣っていたとしても、昨今のようなリストラの対象になるといった大事には至らなかったのが現状です。
なにしろ、会社は終身雇用を当たり前と考え、会社の業績は右肩上がりで、そのうえ、社員の横並び意識が強く、会社もそれに配慮した人事をしていたからです。人間関係力がないからといって、クビになどならなかったのです。社内で、「あの人は、ちょっと変わり者だね」「付き合いが悪いやつだね」といった評判は立ちますが、昇進が他の人より多少遅くなるくらいでした。
もともと人間関係力の弱い人はそれはそれで仕方がないと半ばのんびり構えていられることもできたわけですが、長引く不況によりリストラが頻発する事態になったとき、そうはのんびりとしていられなくなったのです。人間関係がうまくいかないと、左遷どころか、真っ先にリストラの対象になってしまうからです。
*この続きは製品版でお楽しみください。
著者について
斎藤 勇(さいとう いさむ)
1943年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。現在、立正大学文学部教授、早稲田大学講師。
企業社会や学校で起きる「足の引っ張り合い」や「イジメ」の行動分析を研究テーマにしており、そのわかりやすい解説には定評がある。