出版社/著者からの内容紹介
新感覚派カップルとして注目を浴びた唐沢寿明と山口智子。ふたりの生い立ちから結婚までを追いながら、現代の理想の夫婦像を追究する。
抄録(「電子書店パピレス」より)
ふたりの出会い
寿明は『ボーイズレビュー・ステイゴールド』の舞台でデビューしたあと、所属事務所の社長のアドバイスでポロシャツを着るようになった。のちに、
「おれはポロシャツ一枚で自分を変えた」
と語っているが、それは爽やかな青年を演出するための小道具のようなものだった。
社長は、寿明の態度や言葉遣い、服装が業界の人間に誤解を受けやすいことを見抜いていた。内面に輝くものを持っていても、ツッパリが過ぎて、使いにくい役者に思われていたのだ。
なにしろ、当時の彼はTシャツの上に革ジャンという姿で通していた。夏にはヨレヨレのTシャツ一枚だったというから、およそ清潔感は感じられない。
社長からポロシャツを手渡されたときには、軟派な男のイメージが浮かんで抵抗を感じたというが、いざ身につけてみると、寿明によく似合っていた。
さっそく、鏡の前でポロシャツの青年に似合う笑顔の練習をしたという。
本人にも、自分を変えたいという願望があったのだろう、初めはぎこちなかった笑顔も、自然に浮かべられるようになった。ボトムも、薄汚いジーパンからチノパンツに変わった。
それからは、会う人に「さわやかな笑顔ですね」と声をかけられるようになり、好感度が増した。同じ時期に、名前も本名の潔から寿明に変更した。
改名の結果、唐沢のキャラクターに明るさが加わった。本人の気持ちも、反逆精神だけでなく、前向きになっていった。
じきにNHKから声がかかって『とっておきの青春』に出演が決まった。共演は尊敬する俳優、緒形拳と斉藤由貴。緒形拳には親しく声をかけてもらい、昼食などを御馳走になったという。
さらに、大阪で『薔薇と棺桶』という舞台を終えたあと、大阪NHKのディレクターに紹介された。そして、頭を坊主にする役でドラマに出てみないか、と声をかけられた。『純ちゃんの応援歌』への出演の打診である。
よほど嬉しかったのだろう、寿明は東京に戻ってきてすぐ、散髪屋へ行き、頭を坊主にした。正式決定の電話を受けたときには、持ち金すべてを賭けた賭けごとに勝ったような気持ちだった。
そして制作発表の日、寿明は主役の智子と対面した。
寿明の役も主役クラスだが、もっぱら記者たちの注目は、智子と高嶋政弘・政伸兄弟、西川弘志らに集まった。二世俳優たちが話題になるのは仕方ないと思いながらも、寿明は、ひとり疎外感を感じていた。
智子と出会ったものの、このときの寿明に恋愛感情はなかった。むしろ、たいした下積みもなく幸運をつかんだ者への、やっかみがあったぐらいだ。智子の育ちのよさを感じるたび、不運続きだった自分を思い出し、苛立ちも覚えた。
周囲の若手俳優たちも、親が芸能人で裕福に育っている。寿明にとっては「向こう側の人間たち」であり、孤立した気持ちがあっても不思議ではない。
智子に対しても、好感を持つより「お嬢さん芸ではこっちが困る。俺は引き立て役に回る余裕はないぞ」という気持ちの方が強かった。
それに、ドラマが始まった当初の彼は、宝塚の女優と淡い交際をしていた。
彼女は関西では顔が知られており、デートの場所も限られていた。おまけにNHKの出演料が生活費の全てだった寿明には、彼女好みの高級レストランなどに連れていくだけの金がない。深い交際に進む前に、現実的なずれがあった。
そんな理由もあって、じきに二人の交際は終わったが、智子と打ち解けるまでにも時間が必要だった。
二カ月、三カ月と撮影が進むうち、二人は休憩時間の合間に会話を交わすようになった。
寿明の印象と違って、智子は、モデルから、いちやくNHKの朝の顔になった幸運に有頂天になるどころか、戸惑いを感じていた。演技が未熟だという自覚を持っていて、共演者たちに迷惑をかけないよう、懸命に努力をしていた。
「私、女優としてやっていく自信がないの……」
そう打ち明けられたこともある。マスコミでは大型新人誕生と騒がれているのに、智子はいつも謙虚だった。そんな様子が寿明には、次第に好ましく思われてきた。やがて、二人は宿泊先のビジネスホテルの内線電話を使い、頻繁に話をするようになった。お互いに東京を離れての生活で、知人も少ない。仕事が終わって疲れて帰ってきても、ホテルの部屋は無味乾燥で、少しも心が安らがない。そんな状況の中で、智子は、打ち解けた話ができる相手がほしかったのだろう。
あるとき、少しやけになったような口調で言った。
「今日もまた食べすぎちゃったわ。自制心がないみたいで、嫌になってしまう」
智子は、もっとテレビ画面で痩せてみえるよう、ダイエットを試みていたのだが、目の前に食べ物があると、ついつい手が伸びてしまう。少しも成果が上がらないことに悩んでいた。
寿明は智子の不安や悩みを聞きながらも、彼女の笑顔を思い浮かべていた。それは、太陽のようにまぶしく、温かかった。智子の笑顔をみると、大きく豊かなものに包まれているような気持ちになる。
内心では沢山の悩みを抱えていながらも、あんな素敵な笑顔を見せることが出来る女性を寿明は他に知らなかった。
不思議な女の子だな……。寿明は、笑顔を見るたびに智子にひかれていった。
著者について
沢木 萌絵(さわき もえ)
1961年生れ。結婚歴2回、婚約破棄歴4回。現在、男と女の新しいライフスタイル、恋愛論等をメインテーマに執筆活動に励む。
はじめに
第一章 波瀾に満ちた生い立ち
父との確執、両親の離婚
大広間でひとり遊びする女の子
子供のころから目立ちたがり屋
実の母より祖母を選んだ智子
寿明にとっての母の存在
姉妹、兄弟たち
ふたりの学生時代
第二章 芸能界で生きる
旅館の若女将をふりきって、芸能界へ
スターになる前のふたり
寿明が別れた恋人から学んだこと
ふたりの出会い
寿明が生年月日を書き直した理由
寿明が憧れたスターたち
ふたりで踊ろう
元気印がトレードマークの智子
ショーケンのセクハラ事件
バツグンのプロポーションは汗と涙の結晶
第三章 知られざる私生活
鉄のような女性ほど涙もろい?
ハードボイルドな寿明とひょうきんな寿明
服装に気を遣わない男とお洒落な女
アッシー君なんか、させられない
仕事に疲れてひとり旅
ソウル音楽をつまみに酒を飲む
ただいま同棲中
愛に生きる女性は嫉妬も深い?
智子の見合い事件
二人の結婚が遅れた本当の理由
ひとつ屋根の下で
いまなお続く父親へのこだわり
智子と母の和解はいつか…
第四章 新感覚派カップル誕生
寿明は智子のどこに惹かれたのか?
智子の理想の男性像は?
ふたりの恋愛観
智子が過去の恋に学んだこと
八年間の交際は長くない
普通の朝に起きた暴行未遂事件
マスコミの報道姿勢に怒る寿明
寿明は意外にロマンチスト?
俺が結婚するとき
好き好き好きの人生がいい!
スタンディングスタイルの入籍発表
実母から祝いのメッセージが
ふたりのスィートホーム
愛は限りなく奪うもの?
夫婦は二人三脚
未完の家族