日本の恐怖怪談

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著者:冬野次郎
価格:¥ 473
河出書房新社


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■ 内容紹介

出版社/著者からの内容紹介
 未練、恨み……断ち切れぬ思いをこの世に残して死んでいった亡者たちは、生者たちとコンタクトをとろうとする。そして、健康でふつうに生活している人間を、死の世界へ引きずりこもうとするのだ――。
 成仏できない浮遊霊、虐待を恨む動物霊。この世に未練を残す怨霊たちが引き起こす恐怖実話! 彼らの次の標的はあなたかもしれない……。


抄録(「電子書店パピレス」より)
   死を準備する姉妹
〈不気味な生まれ方をした二人の姉妹。彼女たちは成長するにつれて、妙な言動をしはじめた……。〉

 長女は不気味な生まれ方をした。生まれた瞬間にも、長女はほとんど産声らしきものをあげずに押し黙ったまま、母親である兵藤英子さん(当時二五歳)の顔をジーッとみつめていた。
 英子さんがいくらあやしても、その子はほとんど笑うことがなかった。こうしたおかしな状態が、その後もずっとつづいたのである。
 真紀ちゃんと名づけられた長女は、二歳になっても三歳になっても、ほとんどニコリともしないで、母親の顔を恨めしそうにジーッとみつめるのである。
 そして満四歳の誕生日の朝、驚くべきことが起こった。朝食前に英子さんが、隣室で誰かがブツブツいっている声に気づいた。いってみると、真紀ちゃんが仏壇にむかってお経をあげているではないか。それも、けっしてマネごとではない。まじめな顔で、真剣にお経をあげていたのだ。もちろん、誰も彼女にお経など教えていない。
 ギョッとした英子さんは「あなたッ」と夫をよんだ。もちろん、夫とて仰天である。なんということだろうと、二人は思わず息をのんで、顔をみあわせてしまった。「真紀ちゃん、どうしたの?」と英子さんが聞くと、真紀ちゃんは「だって、あたしはここから生まれてきたんだもの」といって、仏壇を指さすのだ。
 これには、父親もただ驚くばかりであった。誰からも教えられていないお経を、四歳の女の子が突然唱えはじめるという不可怪な謎は、そのときの両親にはまったく解けなかった。
 その翌年に、次女の由紀ちゃんが生まれた。ところが、彼女も真紀ちゃんとまったく同じで、ニコリともしない赤ん坊だった。
 やがて、真紀ちゃんは小学校へ入学した。それからも、朝食前にかならずお経を読むという奇妙な習慣がつづいた。食事のときは、お茶碗に箸を立てる。「縁起が悪いことするもんじゃありませんッ」と英子さんが叱った。すると真紀ちゃんは、平然とこう答えたのだ。
「だって、あたしは陰膳《かげぜん》を食べたいんだもの」
 そういって、母親の顔を憎悪に満ちた表情でみつめるのだ。両親、とりわけ母親にはまったくなつこうとしなかった。
 不気味なことに、こうした真紀ちゃんの性格や生活は、次女の由紀ちゃんもそっくり受け継いだ。家の中は毎朝、線香のにおいが立ちこめて、まるで墓場かお寺のようであった。
 真紀ちゃんが小学校六年生になったころから、その容貌にひとつの特徴があらわれてきた。目が三角につりあがってきたのである。次女の由紀ちゃんにも、同じような特徴が出てきた。うりふたつである。
 英子さんは「どこかでみた顔だ」と思ったが、思い出せなかった。
 真紀ちゃんが中学に入ったとき、彼女は決定的なことを口にした。
「お母さん、あたし、キツネに似てるでしょ。キツネはトカゲを食べるのかしら?」
 といったのである。
 そのひとことを聞いて、英子さんは「アッ」と叫んで、思わず身震いした。そして「道子ちゃん……」といって絶句してしまった。
 それは、英子さんの中学時代の同窓生の名だった。その女の子は、目が三角につりあがってキツネのようだった。それで、英子さんが中心になって、道子さんをさんざんいじめたのである。
「キツネ、キツネ」とののしるばかりではなく、男の子に命じて、くさった野菜をカバンに入れたり、トカゲを背中から押しこんで「キツネはトカゲでも食べてな」などとあざ笑ったというから、かなりひどいことをくり返していたようだ。
 そんないじめに耐えかねて、道子さんは気の毒にも、中学二年生のときに電車に飛びこんで自殺してしまったのだ。英子さんが中心になって、いじめ殺したも同然だった。
 さすがにこの事件は、英子さんにとって耐えがたいものとなった。一刻も早く忘れ去らねば、自分の神経がやられてしまう。そういう努力もあって、道子さんのことは長いあいだ、記憶の闇に沈められていたのだ。
 しかし、ついに最悪の事態が起こった。その道子さん同様、真紀ちゃんが近所の高崎線の電車に飛びこんで自殺したのである。
 それはちょうど、道子さんの命日だった。
 真紀ちゃんは、英子さんがいじめ殺した道子さんの生まれかわりだったのだ。生まれたときから、中学に入ったら自殺する運命にあり、それを霊感で知っていたのである。それで、恐ろしいことに、生まれたときから死ぬ準備をしていたのだ。
 それ以来、英子さんは強度のノイローゼになり、二度も自殺未遂をくり返している。次女の由紀ちゃんも同じ宿命を背負っていることは、ほぼ見当がつくからだ。
「この子もやがて自殺する」という恐怖が、ノイローゼを悪化させているのである。
 英子さんはときどき「あたしを許して」と、虚ろな目をしてひとりごとをいっているそうだ。


著者について
 冬野 次郎(ふゆの じろう)
 この複雑な現代をさまざまな角度からしなやかに分析し、世に実在する現象、事象の真相を模索しつづけている。怪奇、霊界、超常現象、四次元世界など、いまだ解明されていない不可思議分野を得意とするが、その他にも歴史、科学、社会データなど、多方面にわたって力を発揮している。モットーは「事実をして時代を語らしめる」こと。単行本を中心に活躍、その作品は高い評価を得ている。

■ インデックス

 まえがき


1●どこまでも追いかけてくる恐怖――
 恐るべき怨霊の執念が罪深き人間を襲う…


 死を準備する姉妹
 おぞましい見舞い
 姑いじめの報い
 赤い窓ガラス
 割れた遺影
 焼けなかった義足
 老女にされた娘
 自業自得の事故
 「アザミ」の仕返し
 海を超えた生霊
 女生徒の恨み
 呪い人形の怒り
 潮の香りの亡霊
 幽霊に挑んだ若者
 強引な取材の代償


2●突然、地獄につき落とされる恐怖――
 理不尽な因縁に今夜もまた苦しめられる…


 危険なラブホテル
 血塗られた写真機
 ドクロ模様のアザ
 医療ミスの被害者
 家賃五万円の秘密
 怪しい温泉旅館
 幽霊御殿の令嬢
 ひどい結婚祝い
 川に捨てられた少女
 「お化け松」の崇り
 人身事故の多い駅
 燃え上がる怨霊


3●鳴き声が耳について離れない恐怖――
 冷たい目の動物霊が闇の中から飛びかかる…


 からみつく犬の霊
 虐殺された猫の復讐
 神社のヘビの怒り
 猫の形の火傷痕
 聞き覚えのある言葉
 逆襲するカラス
 ニッと笑うヘビ女
 夢枕に立つ犬男
 赤い目の教師
 化かされる地点
 外れたタイヤの怪
 シッポが生えた男
 従順な犬の報復


4●どうあがいても逃げだせない恐怖――
 禁じられた怪奇地点に引きずり込まれてしまった…


 開かずの土蔵
 血まみれの缶ビール
 異常に寒い部屋
 香典袋のタクシー代
 沼にたたずむ女
 話しかけてくる男
 消えた骸骨標本
 満腹しない山菜料理
 寂しがる死児たち
 魔の池の正体
 死の指定席
 空中を歩く婦人
 女子寮の懺悔室


5●けっして振りほどけない恐怖――
 成仏できぬ浮遊霊が断ちがたい未練を訴える…


 不幸を呼ぶカメラ
 亡霊に犯された女
 霊安室の看護婦
 白骨死体の幻覚
 タクシー運転手の悲劇
 浮かばれぬテレカ
 奇怪な女医
 魂を宿した雛人形
 高級中古車の秘密
 見つからぬ帰り道
 若いシスターの無念
 つきまとう水子霊

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「日本の恐怖怪談」紹介ページの最終更新日時
2005年10月24日 17:51:34
ID:108
※実際の販売・ダウンロードは『電子書籍パピレス』にて行われます。