出版社/著者からの内容紹介
企業、あるいは経営者の評価を数字だけで行えば、ダイエーと中内功は現時点で敗者の烙印を押され、イトーヨーカ堂グループと鈴木敏文は勝者となる。だが、流通業界を長年にわたって見てきた著者は、時代の変化が流通業界の二人の革命児の明暗を分けたと見る。社会変革を志した中内はある時点から消費者の支持を失い、徹底した自己改革で時代の変化を先取りした鈴木に消費者の支持が集まるようになる。著者が30年に及ぶフィールドワークをもとに描いた流通論の集大成。
抄録(「電子書店パピレス」より)
サプライチェーンに先んじたシステム
革命性の違いの第二は何か。中内さんの革命が「目的革命」であるのに対して鈴木さんのそれは「結果革命」という点にある。意図した革命なら当事者は当然のようにそれを口にする。アピール力の差はそこにも生まれる。
西友の創業者であり、支配人、副社長としてダイエーに次ぐビッグストアに育て上げた後、流通産業研究所所長(現セゾン総研)に就任した上野光平さん(故人)は私の尊敬する先輩である。上野さんの言葉を借りるなら、同じ愛国心でも中内さんのそれは声高な愛国心であり、鈴木さんのそれは静かな愛国心と評することが出来るのではないか。両者はタイプこそ違え、革命性においては卓越した存在であることは確かだ。
中内さんと異なり鈴木さんの革命性は静かであるが故に、世間の耳目をそばだたせることはない。また革命性などという言葉すらそぐわないと一般的には見られている。だが、鈴木さんは商業・流通業の次元を超えて、さらには新しい産業創生という視点から見ても、一つの時代を主導し始めていると言っても過言ではない。
セブン―イレブンの創業において、「先例がない、成功事例がない」ということで反対されたコンビニエンスストアという新しいビジネスを敢えて周囲の反対を押し切って始めたときも、セブン―イレブンにおける弁当やおにぎりや惣菜を含め、それまで誰もコンビニエンスストアにおいて主力商材になると思ってもいなかったものを率先して取り上げたときも、鈴木さんの先見性は際立っている。そしてコンビニを見事に人々の日常生活の中に定着させてしまったのである。鈴木さんは無から有を生じる形での新しい需要の創造と市場の開拓を自らの手によって現実のものにしてきている。
そのような例は、こうした他に前例のないクリエイティブな仕事による新しい需要創造、市場開拓、顧客作りの領域だけではない。技術開発、システム開発の場面においても実現されてきている。
例えば今やビジネス界の常識となり始めた製配販(作る人、運ぶ人、売る人)が三位一体となった戦略的同盟、そしてまたこうした考え方をベースとしたサプライチェーンマネジメントやECR等々は、世界的に見ても鈴木さん率いる日本のセブン―イレブンが実践しているベンダーシステムをもって嚆矢とするものである。
アウトソーシングによる協働配送に基づくその画期的なロジスティックスシステム、あるいは今や世界に冠たる革新的存在となった高度情報システム(第五次総合情報システム)等々に見られるように、日本のセブン―イレブンの持つ技術とシステムにしてもそうである。これらはすべてどこにもお手本のない全くオリジナルな創造物なのである。
著者について
緒方 知行(おがた ともゆき)
1939年福岡県生まれ。62年早稲田大学卒業。64年株式会社商業界入社。「販売革新」、「商業界」各編集長、編集局長などを経て独立。現在、オフィス2020代表兼月刊誌「2020AIM」主幹。主な著書に『セブン−イレブン流通情報戦略』『緒方知行のThe商人塾』など。
第一章 ダイエー的なるものの「敗北」
老革命戦士の退場
“負け戦”は八〇年代に始まった
旧い理念の呪縛
第二章 過去を破壊する
創業者の悲劇
三人の創業者の立場
ダイエーにとっての歴史のIF
良い品をどんどん安く
イトーヨーカ堂の企業改革
死に筋商品の排除
セブン―イレブンは過剰品質?
第三章 拡散のロマン、深化のロマン
品種需要から単品需要へ
わが安売り哲学
価値訴求の時代
イノベーションなき拡大
売り切る力の喪失
第四章 量はすべてを癒さない
伊藤雅俊の商人道
ソフトの競争へ
五%還元セールの衝撃
鈴木流アウトソーシング
中内流、敵か味方か
第五章 それでも中内功を評価する
業態革新と業態内革新
GMS空洞化論の虚実
「おお、神よ……」
稼ぐ技術、遣う芸術
第六章 量の革命から質の革命へ
ロマンなき静かな革命家
サプライチェーンに先んじたシステム
スケールメリットの嘘
プランタン銀座の教訓
「彼は自ら創業している」
第七章 鈴木敏文の反常識
ハリネズミのような闘争心
イミテーションとジェラシー
ドミナント戦略の理由
「人間て、そんなに器用ではない」
他店見学・視察は禁止
「へえ、リエンジニアリングなの」
ジャーナリスト的才能の功罪
第八章 変化創造か、変化対応か
PB大魔王宣言の真意
白猫でも黒猫でも
天命と後ろめたさ
神の国アメリカ
伝道師の恨み
マーチャンダイジングの力
第九章 不況だから売れない?
計画目標を持たない
攻めの商い、守りの商い
旧来型理論の破綻
金科玉条とせず
右往左往せず 289
第十章 新しい情報戦略
国産システムの輸出
発注の戦略性
TANPIN・KANRI
マイクロマーチャンダイジング
「データは出すが、情報は出さない」
顧客満足と従業員満足
第十一章 経営者の条件
智にはたらけば
冒険と自己否定
何故、先入れ先出しは駄目なのか
中内さんの一側面
君主の馬前に死す
二人の中内功
カリスマなき経営とは
エピローグ 第三の時代に向けて