出版社/著者からの内容紹介
突然2度目のギリシャの旅をしたくなり、今度こそは満喫するぞ! とウキウキしながらの日本人女性二人組。青いエーゲ海、白くて可愛らしい街。様々な人に出会い、思わぬハプニングが起こり…。ギリシャの見所を回ったり、ナイトライフを楽しんだり! 気楽な旅の様子が、日記のように軽いタッチで描かれる。
抄録(「電子書店パピレス」より)
そこにはすでに世界中から自称ロマンチストの夕日マニアが集まっていた。こんな環境で夕日を見たって感動なんてできはしまい。そう思いながらもどこで見ようかと立ち止まっていると「ちょっとォ、見えないんだけど」と文句を言われる。振り返ると太った黒人の女がふてぶてしい感じでそこに座っている。
「あんだって? テメーが立ちやがれ!」
そう言いながらもしゃがむと「サンキュー」と言われた。
しゃがんでいるのも疲れるのでやはり立ち上がって場所を移る。でも居場所がない。どうしよう。何が何でも夕日をよく見なければいけないという強迫観念にかられている。なんかバカみたい。そのうちに太陽は早々と雲の中に隠れ、ほんの短い時間その雲を赤く染めるとあっという間に暗くなってしまった。
ところがどうだろう、がっかりして道を戻ると、そこにはものすごく大きな、一抱えくらいもある満月がぽっかりと浮かんでいるのだ。
この光景はすばらしかった。空の色はちょうどエーゲ海独特の海の色と同じ青。そこにスライドで映し出したかのような月がたたずんでいる。そしてそのすぐ下には三日月型をしているといわれるサントリーニ島が不思議なカーブを描いている。まわりにどんなに人がいても、まわりがどんなにうるさくても、しんと静まり返って見える。幻想的というより不気味な感じさえする。
アトランティス大陸…この島は、絶対秘密を持っていると確信する。
その日宿に帰ってから、もう一度あの月を見ようと思い立って外に出た。しかし敷地内で空を見上げても見当らない。そこにペトロスが通り掛かった。
「月を見ようと思って。今日見ました? 満月だったみたい。すごく大きいの」
「ああそうだったね。今はまだ向こう側にあるから見えないけど、あと一、二時間もしたらここからも見えるよ」
そう言われてしばらく忘れていたのだが、セーコが寝静まってしまってから再び思い出して外に出た。けれども振り返ろうとして途端に恐くなった。こんな真夜中、こんな静かな所であんな月を一人で見てしまっては、その瞬間怪奇現象でも起ってしまいそう。結局振り返らずに部屋に戻った。
著者について
石垣 由美子(いしがき ゆみこ)
1965年東京都中野区生まれ。法政大学文学部哲学科卒業。
證券会社、出版社勤務を経てカナダに一年間遊学。帰国後執筆活動に入る。
本書の他に、トロントを舞台にした『トロントの休日』(東洋出版刊)がある。
これまで訪れた国はヨーロッパ、北アメリカ、南太平洋を中心に数十カ国に及ぶ。旅行、映画、占い、ダイエットの話なら、三日三晩話し続けられる熱中タイプのAB型。