出版社/著者からの内容紹介
「世の中は大胆な再編へと流れている」最近よく聞く言葉です。こんな時代に生き残れる管理者の条件とはどんなものなのでしょうか? 管理者に必要な、経営・組織・指導者論を、エピソードを織り交ぜながら語ります。リーダー仲間とこの書をネタに議論してみては?
抄録(「電子書店パピレス」より)
5 説得力も変わりつつある
新人課長を集めた席で、担当重役にいわれたことがあります。「課長になると残業手当はつかなくなります。その代わり、残業手当分、給与は下回るでしょうが、課長職手当というものが支給されます。課長になったのですから、地位とカネの両方を手に入れようなどとは思わないように」
課長というサラリーマン人生の‘関所手形’を手に入れて、いくぶん舞い上がっている人たちを前に、かなりえげつないことをサラリといわれた気がしたものです。
説得というのは、前置きに次ぐ核心の話が根本になっています。新聞でいうと、見出しと概説に続く「本文」のようなものです。
重役のいう「両方を手に入れようなどとは思わないように」は、説得どころか、見出しですべて申し渡そうとしたもので「なるほど、うまい言い方があるものだ」と、‘そのとき’は感心してしまいました。コトの是非はともかく(‘非’に近い表現といわざるを得ませんが)、こうした上司の極端な表現は、長い年月がたってもなかなか忘れないものです。
最近は、トップ→リーダーへの「設問」も、手の込んだものになりつつあります。
「あなたが会社に示したいのは『忠誠《ロイヤリティ》』か『貢献《コントリビューション》』か」というものです。以前は、忠誠心さえあれば他はいらないというくらい、これは大事にされた言葉です。
けれども、環境が厳しいいま、「終身お仕えする」という忠誠心のニュアンスは、「お好きなときにどうぞ」の‘含み’が出てきました。もし、択一を迫られたら「貢献」にしくはありません。配転にしろ(一時的)降格にしろ、「貢献」の二文字は頼りになり、説得力を持つはずです。
6 「衰微」の兆候を察知する力
次に挙げる兆候の数々は、どこの職場にも多かれ少なかれみられるものです。しかし、こうした衰微(悪)の兆候が、いくつも揃い踏み≠始めると危険。これらの‘複合汚染’が大事に至らぬよう、トップにコンタクトし進言するのもリーダーに必須の役割といえます。
「特に問題もなく仕事が流れている」
この状態は、まことに結構なようにみえますが、見方を変えると「安易に流れている」となりかねません。人の一生は「平凡に生きられたこと」を何よりとしますが、企業や組織は、一人の人間の生涯よりはるかに複雑でリスキーな要素に満ちていることを忘れてはいけないでしょう。安易に流れている状態とは、いってみれば現状肯定型になっており、問題を見つけ出して改善する意欲のない姿といえます。
これとは全く対照的に「(異常な)緊張感が漂っている」状態もリスキーです。「誰かが何か(よからぬこと)を嗅ぎつけた」のかもしれません。(上下や男女関係など)人間関係にねじれが発生したのかもしれません。
こうした場合、リーダーは、修復に全力をあげなければ、部下たちは、本来の仕事に集中できなくなるでしょう。「いかに解決するか」より「なぜ発生したのか」を探るのが先となります。
こうした「リーダーの、周りの‘気配’を読み取る力」とは、極めて重要なもので、この嗅覚の能力があるからこそリーダーに値する、ということもできます。
大企業の中でも、特化して急成長した部門の若い管理職の中に、この‘気’を感じる能力が極度に低い人がいます。業績だけで急造された管理職は、ステータスにふさわしい気配りができるようセンスを磨くため人一倍努力をしなくてはなりません。
著者について
野口 靖夫(のぐち やすお)
ビジネス評論家
1940年北海道生まれ。‘63年北海道大学工学部精密工学科卒業。キヤノン(株)入社。事務機設計、セールスエンジニア、開発技術評価部副部長を経て、現在、朝日カルチャーセンター、東海総研、三井総研など多数のスクール、シンクタンクおよび企業のセミナー講師やコンサルタントとして活躍中。
〈主な著書〉
『文書の危機管理と災害対策』『ファイリングと書類整理の上手なやり方』『ファイリングの技術』『パーソナル・ファイリングの方法』『人間関係の技術!』(共著)(以上、日本実業出版社)『超メモ術』『情報・書類の整理術』(以上、PHP研究所)『ファイリングの進め方』『ファイリングの実務(VTR)』(日本経済新聞社)『考える技術』(創元社)など多数。